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長野市松代町の町外れにある「加賀井温泉
一陽館」は、長野市内の人にもあまり知られていない温泉です。場所は、松代の街からちょっと離れたところにあります。
宿は歴史を感じさせる木造2階建て。しかし、今は日帰り入浴のみの営業で、宿泊客はとっていません。その宿の手前に売店のような建物があり、そこで入浴料(ここでは「一浴料」という)を払います。 |
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その売店の向いには、昔の小学校の分校という感じの木造の建物があります。湯殿と木造3階建ての休憩所です。休憩所には、寒い間はコタツがあります。常連さんは、ここでセルフサービスのお茶を飲み、持参した「お茶うけ」を楽しみながら思い思いに過ごしているようです。 |
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大きな湯殿には男女別の浴室があります。脱衣室はなく、湯舟のまわりに棚があり、脱衣カゴが並んでいます。浴室には、カランもシャワーもありません。ただ、湯船があるのみです。
コンクリート造りの浴槽は幅2m、長さ10mくらい。浴槽には、透明の湯がどんどん流れ込んでいます。この湯が湯舟ではやや濁ったような色になります。飲むと独特の味があります。炭酸カルシウム、塩分、炭酸ガスを多量に含んだ泉質らしいのですが、湯舟のフチは温泉の成分が固まって、石膏作品のようです。ついでにケロリンの風呂桶も石膏作品になりかかっています。
常連の一人が、「この湯で目を洗うといいんですよ」と教えてくれました。目を洗うと、ちょっと染みる感じがしますが、そのあとでスキッとします。 |
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内湯とは別源泉の混浴の露天風呂はコンクリートの四角い浴槽が2つに仕切られています。片方は白っぽく濁った湯で、ぬるめ。もう一方は時間が経って酸化した赤茶色の、さらにぬるい湯が。この露天風呂には、いつも1時間以上は入るんですが、冬の間は、湯からあがると、寒さでこごえそうになります。
源泉にはフタがしてあり、「ボコッ、ボコッ」と音を立てて湯が吹き出しています。湧出量は露天風呂だけでも毎分300リットルもあるので、お湯がぜいたくに使われています。湯舟からあふれた湯は、川になって畑の間を流れて行きました。 |
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ご主人のお話によれば、お客さんから「旅館のほうにお湯を引いて、内湯を作ればもっと客が来る」と言われるそうです。が、「温泉は距離をおくほど劣化する。この湯は源泉の場所で入ってこそ価値がある」との信念で、拡張する気はないそうです。この雰囲気とお湯は、いつまでも守っていただきたいものです。
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