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時間の流れを止めたいと思う人は、一度美ヶ原温泉に行ってみてほしい。それも、早着き、遅発ちで。カップルや家族で落ち着いて静かに過ごしたい人にお勧めする。
美ヶ原温泉は、浅間温泉と並ぶ松本の奥座敷。バーやスナックはない、実に静かな温泉街だ。小さなエリアではあるが旅館の数は意外と多く、旅館のタイプは、数寄屋造りの瀟洒な旅館から、長逗留できる安価な湯治宿までバラエティに富んでいる。
酒井屋旅館は、通称「白糸通り」という旅館街の表通りに建つ小さな旅館の一軒。木造の建物は近年改装され、昔の小さな旅籠のような風情を残しながら落ち着いた佇まい。玄関はいつもきれいに掃き清められ、野の草花が大きな甕に活られている。中は、改装にあわせてリフォームした家具や道具で飾られ、時代を超えて受け継いだものが形を変えて宿の中にしっかりと組み込まれている。
宿のお湯は、白糸源泉。無味無臭透明でくせがなく、さらっとしている。温度は適温でなんとも地味だが、温泉自体は強いパワー。あんまり長く入っているとグラグラになるので注意が必要。この湯を、2,3人も入ればいっぱいの小さな湯船にかけ流している。宿の湯は湯口からの飲泉が可能で整腸などに効果があるそうだ。
この宿は、女将さんと板場を預かるご主人が二人で切り盛りしている。部屋数は少なく、それ以上に客の組数が少ないので、きめの細かいサービスを受けられる。食事処を客毎に分け、女将が順番にサーブしてくれる。山菜、キノコの時期には、ご主人が採ってきた食材が細やかに料理され、食べきれないほど。松本の人たちが主に使うせいか、お刺身等のネタはとても新鮮で美味。
(04.10 会員No.0513) |