逆巻温泉は、平家落人伝説が残る秋山郷の入り口に近い北側に位置する。一軒宿の川津屋は、国道405号から車で3分ほど入った道の突き当たり、山の中腹に建つ宿。客室5部屋の小さな宿を家族だけで切り盛りしている。建物は数年前に建て直したそうで、ゆとりをもったシンプルな作り。客室の窓からは残雪を頂いた急峻な山が正面と両側に見え、山深い所に来たことを実感させる。
風呂は、24時間入浴可の『めいそうの湯』という洞窟風呂と『展望の湯』という内湯。どちらも札を架けて男女別または家族貸切で使う。
『めいそうの湯』は、山の中腹に穿たれた洞窟風呂を近年改装したもの。洞窟の岩盤から滲みだした無色透明の青みがかった湯は、5,6人が入れる程度の湯船に掛け流されている。飲泉コップが湯口に置かれており、無臭で飲みやすい。ぬるめだと聞いていた湯は温度が一定せず、湯口に手をあてていると時々触れないほど熱い湯が出てきてびっくりする。湯船は、やや熱め適温といったところ。宿の女将曰く、岩盤から地熱であたためられた自然湧出の湯をそのまま流しているため温度調節ができない、とのこと。湯気のこもる浴室はスチームサウナのようで、汗が止まらない。浴感がない、という人も多いかもしれないが、あとからジワジワと効いてくる。
一方、内湯は大変小さく、3人で入ればいっぱい。少しづつ掛け流されている湯船は、とてもぬるい。聞けば、浴室を作る際、床に断熱材を入れなかったため引っ張ってくる湯の温度がすぐに下がってしまう、とのこと。宿の人は『設計ミスだ』と苦笑い。窓を開けると真正面に雪を被った鳥甲山。景色に見とれながら湯浴みをしていると、のんびりした気分になる。
食事は別室でいただく旬の山菜と臭みを抜いた熊肉鍋、川魚。温かいものを順番に供されるので、ちょっと贅沢な気分になる。朝御飯もしっかりして品数が多い。だし巻き玉子と天日干しコシヒカリの取り合わせが絶妙。
家族経営ならではの心こもったおもてなしを受け、とても気分よく宿を出発できた。他のお客さんと一緒になりにくい平日は狙い目かも。何もせずゆっくりしたいと思う人にお勧めしたい。
(04.5 会員No.0513) |